朝5時30分。
アラームは5時50分のはずなのに、目が覚めた。
「ああ、まだ起きたくない。」
あと20分ある。
もう少しだけ寝ようと思って目を閉じる。
結局、母に起こされた。
どうやらアラームの設定を間違えていたらしい。
少しだけ得した気分になった。
20分だけ、会社へ行く時間を忘れられたから。
通勤は片道1時間半。
バスに乗って、電車に乗って、また歩く。
いつも通り漫画を読んで、本を開く。
本当は内容を頭に入れたい。
でも会社が近づくにつれて、文字だけを目で追っている自分がいた。
「ああ、今日も始まる。」
会社の最寄り駅で降りると、毎日同じことを思う。
憂鬱だ。
今日は特別嫌なことはなかった。
怒られたわけでもない。
失敗したわけでもない。
ただ、課題を進める一日だった。
分からないことが出てくる。
本来なら聞けば数分で終わることかもしれない。
でも聞けない。
話しかけづらい。
結局、自分で資料を探して、過去のデータを漁って、時間をかけて調べる。
効率は悪いと思う。
でも、それでも話しかけるよりは楽だった。
新卒4ヶ月。
まだ大きな仕事は任されていない。
だから時間だけがゆっくり流れていく。
時計を見る。
あと2時間。
また時計を見る。
あと1時間。
そんなことを繰り返しているうちに、退勤時間になった。
今日、会社で何人と話しただろう。
思い返しても、ほとんど記憶にない。
直属の上司とは必要最低限。
雑談もない。
会社にいるのに、一人でいるような感覚だった。
人と話さない日が続くと、心は少しずつ疲れていく。
体よりも、そっちの方がしんどい。
退勤した。
「終わった。」
その瞬間だけは安心する。
でも同時に思う。
今日が終わるということは、明日が来るということだ。
また朝が来る。
また1時間半かけて会社へ向かう。
また話しかけられず、話しかけられなくて、一日が終わる。
今はその繰り返しだ。
今日は特別つらい一日じゃなかった。
それでも、会社を辞めたいと思った。
たぶん、明日も同じことを思う。

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